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Q:まずはお店をスタートさせたお話をお聞かせください。
Laurent氏(以下L):家具職人の父の影響で子供の頃から家具や木に触れながら育ちました。
日本では当初まったく違う仕事をしていたのですが、ある時自分にとっては当たり前にみえていた古いフランスの家具が、日本では別の価値があることに気づいて、アンティーク家具を扱う【Laurent Philippe Cluet (ロホン・フィリップ・クルエ)】を2013年オープンしました。
この場所を選んだのは以前より住んでいたなじみのある場所であったこと。
決して利便性の良い場所ではないのですが、アンティーク家具が好きな方がホームページなどをみてお店の存在を知ってくださり近くの横浜はもちろん、鎌倉や東京からこのお店を訪ねてくれるようになりました。
1770年代の店で扱うもっとも歴史の
長い椅子もメンテナンスで美しく保たれている
店の奥には工房も。
店はすべてクルエ氏が自身で内装した
Q:アンティーク家具の魅力とは?
L:『唯一無二』というのでしょうか?まさにこの世に1つしかない、量産にはない魅力があります。
物資も手に入りづらい時代に工夫して作られている為、使われている素材も自然の物がほとんどです。またそれをなんどもメンテナンスしながら大切に使用され時代を重ねてきたことも、独特の風合いがうまれてその価値を増します。
古いテーブルをメンテナンスしていたら昔の硬貨が裏にかくされていたことがあり、そのテーブルの歴史を感じることなどもありました。
すべてのアンティーク家具には 何年にもわたって積み重ねられてきたストーリーが宿っています。私はそんな背景もすべて一緒にお届けしたいと思っています。
傷や小さなゆがみ、変色などもその
家具の個性として大切に守りたい
Q:日本とフランスの生活の違いや今の生活でこだわっていることを教えてください。
L:日本人はとてもキッチリしていて真面目ですね。仕事の上ではとてもよいことだとは思っています。ただ、たまに少し融通がきかないなぁと感じることもあります。フランス人は良い意味でいえばゆったりしています。でもこれが仕事となると少々ルーズで困ります。買い付けの仕事に出かけた時、2時間またされたりしたことも。
こちらの常識としてあたりまえだと思っていたことが、国が違うことであたりまえではないことなども多々ありますから、生活の中で自分や自分たち家族のルールを、1つずつ作っていかなければいけないと感じています。
Q:インテリアでこころがけていることは?
理恵氏(以下R):今は3人子供がいるので、毎日が慌ただしく部屋のインテリアにこだわっている暇はありません。
“こういう仕事をされているので、素敵な部屋に住まれているんでしょ?”とよく言われますけど…。今の生活は子供が優先ですのでなるべく安全に、怪我をしないようにこころがけるまでです。
そのためにもなるべく物を増やさずシンプルに暮らすことでしょうか。ライフスタイルに応じて、その時その時の暮らしがしやすいインテリアを楽しむことも大事なのかもしれません。
店内にはフランスで買い付けた18世紀・19世紀の
アンティーク家具が豊富に飾られている
Q:現在3人のお子さんがいらっしゃるとのこと。日々どのような暮らしですか?
R:本当に慌ただしく正直めちゃくちゃです。(笑)
3人目がまだ赤ちゃんということもありどうしてもかかりきりになりますが、そうなると上の2人は本当に言うことを聞きません。それでもやっぱり子供は可愛いのですが。
お店には大切な家具がたくさんありますから、ここではあまり遊ばせないようにしています。ここに連れてくると子供たちも少し緊張するみたいです。
3人の子育てにおわれる日々は
めまぐるしいが喜びも3倍
Q:子育てということでの日本とフランスの違い、良いところ悪いところなどあれば教えてください。
R:先ほどもあげたように国によっての違いというか、こちらが当たり前だと思っていたことが違っていたり、常識も個々でとらえ方が違ったりします。
その為なるべく情報に左右されず自分たちのルールを作っていこうと思っています。
主人は子供にその場を取り繕うようなウソをつきません。子供と対等に向き合います。子供が大切にしている大人から見たら“石ころ”みたいなものでもきちんと一緒に大切に扱います。
お店では職人の顔ですが、家にいるときには常に子供たちと遊んでくれるとてもよいお父さんです。
どうしても目の色や髪の色など見た目の違いから、この先つまずくこともあるかもしれませんが、人と違うことを誇りに思えるように、育てていきたいと思っています。
家では優しいお父さんも大切な家具の
並ぶお店では子供たちの行動に厳しい
Q:仕事の時に大切にしているモノや毎日取り入れているモノがあれば教えてください。
L:“André-Jacob Roubo”の著書である写真の本は何度も読み返している自分にとっての家具の教科書です。
アンティーク家具を志すものにはカリスマ的な著者のこの本から、家具のことを全て学んできました。古い家具のメンテナンスに使う塗料などももこの本に書かれているレシピから、自然のもので調合しています。
接着剤なども“ケミカル”な接着剤は一度ついたらはがれないのですが、“自然”の材料で作った接着剤は水で剥がせるので、修復の際に家具に負担がかからず修復できます。ナチュラルな素材を使うからこそ、古い家具にも負担がかからず風合いを損ねることなくメンテナンスできるのだと思っています。私のお店の修復に使う材料や塗料は全て、当時の職人のレシピを再現した、自然由来でオーガニックのものです。
家具作りやメンテナンスのために
何度も見なおしている本は大切な教科書
メンテナンスに使う塗料なども本のレシピを
再現して家具に負担のないよう心がけている
Q:仕事や日常でこだわっていることを教えてください。
L:自然なもの・自然であることを大切にしています。
昔の人は手に入るものが限られていたなりに工夫をして、今ではゴミにしてしまうようなものまで何かに活用していました。
なるべく無駄をなくすことも大切ですし、何より天然の素材をつかうことで古い家具も当時に近い状態で再生できるのだと思っています。
自分の身体にもケミカルにつくられた薬などには頼りすぎず、なるべく日々の食事や過ごす生活の中での時間で調整できるよう心がけたいと思っています。
情報に左右されず家族で自分たちなりの
ルールを作っていきたい
フランス生まれ。家具職人の父親の影響で、幼少期より家具や木に触れることが多く育つ。1本の木からアンティーク家具が生まれることへの価値や積み重ねられてきたストーリー・家具それぞれが持つ個性や表情の魅力を伝えたいと日本で【Laurent Philippe Cluet (ロホン・フィリップ・クルエ)】を2013年オープン。妻、理恵氏と国際結婚し3児の子育てに向き合う日々。