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CREATORS EYE

Vol 18
2015.10.13

思いをひとつひとつの作品に込めて

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この秋冬の【BEARDSLEY】は『INTERIOR DECO』をテーマに展開中ですが、10月は“ファブリック&タッセル”と題したイベントを開催。パリの家でさりげなく飾られているようなインテリアからインスパイアされた、キーアイコン“タッセル”を施したワンピースやニットなどが展開されます。

今回はこの“タッセル”を1点ずつ手作りで制作いただいたニット作家のnaokoさんにお話しをお聞きしました。

お仕事をはじめたきっかけ

Q:このお仕事をはじめたきっかけを教えてください。

もともと母が着物に通じていて、藍染めや紬などの古布を取り入れたデザイナーだったこともあり、幼いころから骨董市などに出向く機会も多く、その色合いの美しさにひかれていました。

OLをしていた頃に趣味でニットの作品を作ったり機織りを習ったりする中で、友人と一緒に作品展をすることになりました。その時に、ニットと着物古布を織り交ぜた作品を制作して販売していたら、とある婦人に「モノ作りを続けていきなさい!」と背中をおされて。 その後作品の一つをセレクトショップのバイヤーに見せたところ取り扱いが決まり、そこから仕事が増えていきました。

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骨董市で集めた着物の古布。鮮やかな色や柄が美しい

Q:どんなモノ・コトからデザインのインスピレーションが生まれますか?

色の綺麗なもの、映画、骨董市、ヨーロッパなどに行った時などです。

着物の世界は奥が深く柄と柄を大胆に合わせたり、色合わせが斬新だったりで、とても興味深いです。たぶん着物自体は形の変わらないものなので、柄や色合わせなどでいかに個性をだせるかというところが当時はおしゃれの基本だったのでしょう。また当時流行っていた色、たとえばこのヘアアクセサリーに使っている紫色は今の時代でも一番の売れ筋になったりと、流行のつながりを不思議に感じたりもします。日本人に似合う色が当時から存在していて、それが時代を超えても支持されることに色の持つパワーを感じます。

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このヘアアクセサリーも着物の古布。手前の紫が、昔も今も人気のカラー

海外にいっても必ず蚤の市に繰り出します。そこでアンティークの布やレース・時計のパーツなど作品に繋がる掘り出し物を探すのも楽しみです。旅先で見つけたものを自分らしく、日本の古布と 組み合わせて新しく生き返らせることを想像しながらアイデアをめぐらせます。

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アンティーク生地とレースを合わせたキャミソールと、一粒ずつ色や大きさの違う布玉ネックレスは海外で出会った大切なもの

写真のブルーのキャミソールはオーストラリアで、布玉のネックレスはパリで出会った、手作りならではの1点ものでとても大切にしています。手作りの良さは二度と手に入らない特別感があるところ。自分にとってこの2点がそうであるように、私の作品もまた、誰かの特別なモノになるといいなと思っています。

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骨董市でその着物の歴史を聞けるのも楽しみの一つ。
モノ作りのヒントになることも

BEARDSLEYのタッセルのこと

Q:今回【BEARDSLEY】の“タッセル”はどのようなイメージで制作されたのでしょうか?

はっと人目を惹きつけるようなインパクトのあるものにしたいと強いイメージで制作しました。

もともと先にあげた着物の古布でフリンジを作ったマフラーが【BEARDSLEY】のデザイナーさんの目にとまり、これをアンティークスカーフでアレンジできないかとの相談を受けました。

実は以前から【BEARDSLEY】の服が個人的にも大好きで、自由が丘のお店にも何度も足を運んでいたんです。既製品にはない手仕事感のある風合いや、1点ごとに表情の違うパーツなど、自分のモノ作りに近いものを感じていたのです。

今回このタッセルや他パーツを制作するときに、自分の作品は手作業ですし使う布や毛糸など1点ずつ表情が変わってしまうのですが、そのことを相談したときにむしろその方がいいと言っていただけたことも共感できる 思いで、とても嬉しく感じました。

スカーフを裂くにあたり、着物もそうなのですが、そもそもスカーフでの状態でもよい柄であることが重要です。よい柄のモノは裂いて、その後裂織りにしたり、編んだりと手を加えても味のあるいいものになります。裂くからと言って柄は何でもいいという訳ではないので、柄も厳選しました。

アンティークスカーフを選ぶ作業は心躍る作業でした。イメージビジュアルに使っていただいた写真のタッセルは、元のスカーフにハサミを入れるのがもったいと思うくらいでしたが、それくらいの方が納得のいくよいモノが出来るのだと思いました。
 

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naokoさんが1点ずつ制作した“タッセル”。この秋、【BEARDSLEY】のイメージビジュアルとして雑誌にも掲載された

Q:1つのタッセルを仕上げるまでにどのくらいの時間がかかるのでしょうか?また手作りならではの風合いなどを保つため、取扱いで気をつけたいことを教えて下さい。

スカーフを選ぶ、一旦洗い、アイロンをかけ、裂き、タッセルにします。流れ作業でやっているのですが、洗濯やアイロンの時間も入れると1時間はかかると思います。

折れ目がつかないようにぐしゃぐしゃにせずに丁寧に保管をされると、いつまでもきれいなままでご使用いただけます。シルク素材ですので保管時の湿気にも気を付けたがよいかと思います。

モノ作りにたいする思い

Q:代表的な作品とそのこだわりポイントを教えてください。

【anascott**(アナスコット)】というブランドで作っている着物の古布を裂いて、マフラーフリンジにしたものです。こだわりのポイントは柄と柄の組み合わせ、独特の色の組み合わせです。

【anascott**】では手作り感のあるニットと着物の古布で1点物的な作品感のあるモノ作りにこだわりましたが、現在はもう一つのラインとして【Bllomy psykhe(ブルーミープシュケ)】でアートフラワーを使ったヘアアクセサリーやコサージュなどの小物も制作しています。こちらも既存で花の形になっているアートフラワーを、あえて一枚ずつ花びらをバラして新たに組み直したり、色合わせなどの個性も大切にしながら作っています。

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【Bllomy psykhe】の小物。1点ごとの色合わせや
花びら1枚にもこだわりがある

Q:今後手がけてみたいモチーフや気になっているアイテムなどありますか?

今回【BEARDSLEY】でスカーフを扱ってみてとても面白かったので、またスカーフを使ったものを作ってみたいです。

また着物だけではなくアンティーク全般、先ほどお話したように海外の蚤の市で見つけたヨーロッパの古い布やレースもどんどん使っていきたいです。

色へのこだわりはモノ作りの中でとても重要に考えています。ドキドキ、ワクワクするような見たことにも無い色合わせや、はっとするような色の魅力を伝えていきたいです。

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パリの蚤の市で買い集めたアンティークレース。着物の古布と合わせて新しい作品も考えたい

こだわりの1品

Q:仕事の時必ず持っていくものや毎日取り入れているものがあれば教えてください。

自宅で仕事をしているので、持っていくものというのは少し違うのですが、海外で購入した、ブランド品ではない1点物の特別なアクセサリーや骨董市で買ったものなどは、物を作る上で原動力となります。

また、心地よく過ごすために香りを取り入れることを大切にしています。 気に入った香りのハンドクリームを塗ったりアロマを焚いたりと、一日中家にいるときのちょっとした 気分転換に、香りは欠かせないものになっています。

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お気に入りの【AYURA】のハンドクリームは、さわやかなグリーンティを感じさせる香り

かわらぬ気持

Q:仕事や日常でこだわっていることを教えてください。

睡眠をしっかり取ることです。体のコンディションがしっかりしていないといいモノは生み出せません。また新しいモノを考える時が午前中、ルーティンの作業は遅い時間にしています。遅い時間だと脳みそがいっぱいになるからという話を本当かウソかわかりませんがそんなことを聞いてから、そうするようにしています。

モノ作りにおいては、妥協しないことです。

素材探しや、色の組み合わせ、仕様も同じモノを何度も作り直して、一番良い状態を見出すことなど。たとえば【Bllomy psykhe】でアートフラワーの花びらを一枚ずつバラすのも、本当に微妙な差ではあるのですが一枚ごとに、かすかに色が違うのです。その組み合わせも納得ができるまで何度も試します。

そうして他にはない、自分らしい1つを作っていきたいと思うのです。

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身体のコンディションを整えて、色へのこだわりと妥協しないモノ作りへの姿勢をいつまでも大切に

naoko / ニット作家

1973年東京生まれ。デザイナーだった母親の影響でファッションに興味を抱き、 近所の手芸教室、機織り教師などに通い、編み物や素材の知識、色について知識を得る。 2004年OLを経てニットのブランド【anascott**】を立ち上げる。 当初はOLをやりながら【HP France】系列のセレクトショップに作品を卸していた。 ニットと着物古布の組み合わせ、独特のカラー出したニット作品がヒット。 その後OLは辞め、デザイナーの仕事一本に。 2014年新しくアートフラワーを使った小物のブランド【Bllomy psykhe】を立ちあげ現在に至る。

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