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Q:このお仕事をはじめたきっかけを教えてください。
もともと雑貨ブランドのバイヤーとして働いていた時、ヨーロッパにはよく行っていました。
主にはパリ・ロンドン・ドイツなどだったのですが、ある時スウェーデンを訪れる機会があり大きな公園や自然に恵まれた美しい街並みに魅了されました。もちろん雑貨が素敵だったことはいうまでもなく、白樺で作られたカッティングボードやスプーンやカゴなど、どこか日本の民芸品にも近いような手仕事の温かみを感じる雑貨たちに巡り合いました。
翌年はプライベートでもスウェーデンとフィンランドへ行き、ますます北欧の魅力にはまっていくことに。「独立してお店をはじめてみよう!」と決心して2004年に会社を退社して、北欧への買い付けの旅に向かいました。2005年に【SPOONFUL】を立ち上げ、あっという間に10年の月日が経ちました。
仕事で訪れた北欧の魅力にはまり独立し自分でお店を
始めることに
3度目に訪れた時のスウェーデンは真夏の光が水辺に
輝き、とにかくその風景の美しさに魅了された
Q:おさださんが感じる北欧と北欧雑貨の魅力を教えてください。
街は本当に自然が美しく、その自然を活かした雑貨たちは先ほどもあげたように、細やかな手作業がほどこされた手工芸品などは飾るだけでなく実用品としても優秀で、何ともいえない温かみを感じます。
長年作り続けられている伝統的なアイテムでも作家さんによって個性があり、ひとつひとつ手に取らずにはいられません。カラフルなアイテムももちろん北欧らしく大好きですが、暮らしの為に必要とされた北欧の自然から作られる 手工芸品は味わいが深く、毎回バイイングに訪れるたび特にその魅力に引き付けられます。
大きな公園や、食材や雑貨の為の素材が豊富な森は
美しい自然に囲まれている
1輪ごとにさりげなく飾られたバラ越しに見える
ガーデンもまた美しい
冬の寒さと暗い空が長く続くからこそハイシーズンの
7月は一際自然が美しく、人々は喜びに満ちている
Q:ご自身で企画・同行されている『北欧雑貨ツアー』のことに関して教えてください。
年1回、大体毎年6月下旬ごろに実施するのですが、今年で6回目となりました。
雑誌に載っている北欧に関するコラムなどを読むたびに、少し物足りない気持ちもあり、もっともっとその魅力を伝えたいという思いから、2009年に“北欧スウェーデンの旅手帖”という本を出したのですが、この本をたまたま読んだ旅行会社の方が「是非、おさださんが紹介する“北欧雑貨をめぐる旅“をツアーで企画して欲しい」とお話をいただいたことがきっかけです。
ツアーの時はおススメのレストランでランチをしたり工房や雑貨店を訪ねたり、フリータイムの時も私の おススメスポットへ行ける地図をご用意したりと、はじめて訪れる方やおひとりの参加者でも楽しめる内容を 企画しています。嬉しいことに何度も参加してくださる方もいるので、個人的にバイイングに訪れた時に、新しい雑貨店やレストランなどを常にチェックしています。
参加者のみなさまと一緒に食事をするのも
ツアーでの楽しみのひとつ
ツアーパンフレットからも北欧の魅力を感じてもらえる
ように写真やデザインにもこだわりたい
Q:【BEARDSLEY】では現在“NORDIC COLOR”をテーマに展開をしていますが、北欧でご覧になったインテリアや色のことなどで印象に残っていることをお聞かせください。
寒い冬の時期が長く、昼間も空は厚い雲に覆われてます。暗い天候からなのか部屋の天井や壁は真っ白のことが多く、少しでも室内が明るく見えるように工夫されています。北欧のファブリックの色や柄が鮮やかなのも、真っ白い室内に映えるからではないでしょうか? 森が多いので白樺などその土地の樹木をいかした手工芸品もまた、真っ白な室内に温かみを感じさせる1品なのだと思います。
白を中心にしながら、鮮やかな色使いとアンティークが
調和してどこか温かみを感じるインテリア
真っ白な壁や天井のなかでユニークなキノコの
ランプシェイドが映える
Q:ご自身が北欧雑貨選びをする際に、ポイントにしていることを教えてください。
作りがしっかりしていて、観賞用にとどまらず長く使えるものを探します。
もちろん見た目の可愛さも重要ですが、飾っておくだけではもったいない。「古いモノを捨てずに使い続ける文化」も伝えていきたい北欧の魅力です。ビンテージアイテムなども50~60年代のものが多いのですが、これらもきちんとメンテナンスして実用品として生活に取り入れていただきたいのです。
また現地では手工芸学校に参加することもあります。カゴや木のスプーンなどを作るのですが、実際素材を森で調達するところから学べるワークショップです。たとえば木の根っこを細かく裂いたりすることも工程にあるため、1つのカゴを作るのに1週間かかったりします。そうして時間をかけて細やかにつくられる工程を体験することで、そのモノの価値を自分自身でさらに理解し、北欧雑貨の魅力をきちんとご紹介していければと思っています。
白樺の皮で作られたBOXは全て手作りで使うたびに
風合いが増していく
白樺の木で作られた持ち手のついたコーヒーカップは
スウェーデン伝統の一品
Q:北欧で体験された忘れられない思い出があればお教えください。
先ほどお話した手工芸学校での体験はいつも楽しみにしています。
自然の中で素材を探すことから始まり、1つ1つの工程を手作業で行うことでそのモノのあり方を知り、より愛着も増していくのです。
また田舎に住んでいる作家さんを訪ねた時のことは、大好きな人たちと過ごす楽しい時間でした。
湖畔が庭から見下ろせる眺めのよいダーラナ地方に住む作家さんの家を訪れたときには手作りのスウェーデン料理をおもてなしいただいたり、オークションに参加したりと特別な時間を過ごしました。各家庭がガレージセールをしていたりすることもあり、豊かな自然の中で数々のアンティークを探せる至福の時間は、忘れられない思い出となっています。
Q:仕事の時(海外バイイングの際でも)必ず持っていくものがあれば教えてください。
買い付けメモとペンは必ず持参します。
マーケットではレシートがもらえないことも多いので、その場でイラスト入りの情報を書き込んでおきます。年に1冊くらいのペースで増えていくのですが、行きの飛行機の中で以前の内容を見直したりしながら 現地でのバイイングのイメージを膨らませたりしています。
買い付けメモには商品の詳細に合わせ可愛いイラストも
書き込まれている
Q:仕事や日常でこだわっていることを教えてください。
今でも年に3回は北欧に訪れますが、行くたびにその魅力をさらに感じています。
ツアーの他にも、北欧にまつわるお話をする機会としてカルチャースクール講師のお声かけなどもいただくようになりました。北欧をご紹介できる事柄には、できるだけ柔軟に取り組んでいきたいと思っています。
何度訪れても、もっともっと触れてみたいと思う北欧雑貨の魅力、古くから伝わる文化や美しい街並みのことを沢山の人たちに伝えたい。
私自身が、日本と北欧の架け橋になれるといいなと思っているのです。
訪れるたびに発見がある北欧の魅力を伝えていきたい
オンラインショップと実店舗で運営する北欧雑貨店【SPOONFUL(スプーンフル)】店主。
北欧雑貨ツアーの企画やカルチャースクールの講師をつとめるなど、幅広く活躍する。
著書に“北欧雑貨をめぐる旅”“北欧雑貨手帖”などがある。