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Q:パリで14年過ごされたとのことですが、きっかけはなんだったのでしょうか?
A:学生時代アメリカのサンタクルーズにホームステイする機会があり海外の方たちの人との距離の取り方、壁のなさがとても人間らしくていいなぁと思うことがありました。
そんな経験から是非一度海外で暮らしてみたいと思うようになり、叔父のいるパリで働かないかとの誘いを受けてパリへ行くことに。1年くらいのつもりで住みはじめました。当初はまだまだ学生気分で、自由な時間を目に映る新鮮な場所やモノに囲まれて楽しんでいました。
そんな中、美術館やアート展など文化に触れるようになり次第に興味を持つようになりました。
SHOPも当時は“コンランショップ”や“コレット”などが注目され始めていてディスプレイなどを見るだけでセンスが学べる。知れば知るほどフランス文化の奥深さにはまってしまい、あっという間に時間が過ぎていきました。
Q:パリで生活されながらクリニャンクールにご出店されたそうですが?
A:1年のつもりが気付けば5年の月日がたち、自分でもお店をやってみようという気持ちになりました。知り合いの古物商の方からノウハウを聞き、日本の古い家具などをクリニャンクールのお店で販売しました。日本の家具に興味を持っているフランス人は思いのほか多くて、お店に来てくれる方々との交流から、逆に日本の良さを知ることにもなりました。日本人に向けてはフランスのポスターやキーホルダーなどが驚くほど売れていきました。
その後フランスでも家具を買い付け日本に向けてネットショップで販売することに。
クリニャンクールのお店は3年間経験しましたが、次第に日本での仕事の比重が大きくなり、青山にオープンした『オルネドフォイユ』の運営を本格的にするようになり帰国することになりました。
さりげなく飾られていてもオリジナリティのあるディスプレイ
友人に手伝ってもらいながらご自身でリフォームされたというキッチン
Q:東京とパリ、谷さんが感じる2都市の違いを教えてください。
A:スピード感・時間の流れ方でしょうか?
パリには変わらないよさというものがあります。老舗や有名店はもちろん沢山ありますが、特に行列をしている訳でもなく、街に根付いているといった印象です。選択肢が少ないということなのかもしれませんが、その中に安心感があります。
東京はとにかく街やお店の移り変わりが激しく感じます。そのあわただしさに少々疲れたりもしますが、刺激がありますね。動きがあることも良いことだと思います。
Q:パリの蚤の市の楽しみを教えてください。
A:自分自身の楽しみとしては“買い付け”“自分の買い物”“出会い”この3つです。
決して仕事目線だけでなく時として自分自身への買い物や人と話をしたりするコミュニケーションも楽しみます。この3つがあるから年に何度もいく蚤の市に毎回新鮮な気持ちをもっていられるのかもしれません。案外日本では忙しくてなかなか会えない方に、ばったりパリの展示会や蚤の市で遭遇するなんていうサプライズもあるんですよ。
Q:初心者が注意したい蚤の市の作法は?
A:失敗を恐れないことでしょうか。まずはお金を使って楽しんで欲しいです。
少しくらい「高い!」と思っても“パリの思い出“と思って買ってしまうべきです。
小銭はできるだけ多く用意しましょう。治安はかなり良くはなっているというもののスリには注意して、簡易な財布をいくつかに分けて持っていくと良いかもしれません。
ディスカウントの交渉は是非するべきですよ。ただし「安くしてほしい!」というだけではなく「●●ユーロではどう?」と具体的に金額を言って交渉するのがポイントです。
自分はだいたい表示価格の20~30%引きを目安にトライします。とはいえあまりしつこくしないことも大切です。コミュニケーションは楽しむべきですが、お互いにいやな気持にならない程度に気分よくやりとりするのが蚤の市のルールなのだと思っています。
Q:日本の暮らしにさりげなくアンティークを取り入れるのであれば、どのような物から入るのがおススメですか?
A:大きな家具などよりも食器やフラワーベースなど実用しないまでも部屋のディスプレイの
ポイント使いなどにできるものがおススメです。大きなものは持ち帰ることもメンテナンスも大変です。さりげなく日常に取り入れられるものから入るのがよいのではないでしょうか?
ボタンや生地などを買ってきて自分なりにアレンジしても楽しい。
写真のランチョンマットは古い生地を買ってきて作ったものです。
自分なりのアイディアで新たなものを作り出すことで、より愛着が湧くし、旅の思い出をあらためて楽しめる時間になります。
Q:買い付けに行くときに必ず持っていくもの・大切にしているものがあれば教えてください。
A:ポケットに入るコンパクトサイズのカメラです。大がかりな一眼レフなどよりも買い付けの記録やブログ用でパリの街並みを撮るのにも便利。最近はスマートフォンなども画像がよくなっていますが、意外と盗難されたりする可能性もありますし。これはもうメモの代わりとして欠かせない1品です。
仕事には欠かせないというコンパクトカメラ
Q:最後に仕事や日常でこだわっていることを教えてください。
A:大人になりすぎないことでしょうか?
もちろん大人としてのマナーやモラルは守らないとダメな時もありますが、プライドを持ちすぎることで自分が分からないことや、気になることをそのままにしたりするのはもったいない。
海外で出会うデザイナーやクリエーターたちは、少し子供っぽいところがあってもとても魅力的です。老人になっても少年のような気持ちを持ち続けている素敵な方がたくさんいます。いつまでも色々なことに興味を持っていたいし、学ぶ気持ちを忘れずにいたいですね。
谷さんのTwitter https://twitter.com/tani_akira
1994年に渡仏。2000年にフランスのクリニャンクールに出店。
2004年に雑貨店「オルネ ド フォイユ」そして2007年に家具店「ボワズリー」をオープンし、現在はパリと東京に拠点を置いて活躍中。著書に“パリ流谷さんの週末DIY“などがある。